伏流式ヨシ濾床人工湿地システム

伏流式人工湿地(ヨシ濾床)システムとは

伏流式人工湿地は、地中を通して水を濾過するタイプの人工湿地で、主にヨシを植えた濾過床を用いるためヨシ濾床システムとも呼ばれます。ヨシ濾床には縦方向に水が流れる好気的な縦型濾床と、横方向に水が流れる嫌気的な横型濾床があります。当社では縦型と横型を組み合わせたハイブリッド型ヨシ濾床システムにより、有機物濃度や窒素濃度が極めて高いでん粉工場廃液の処理を試みるため、清里町農協でん粉工場敷地内に廃液処理実験施設を建設しました。

人工湿地を活用した水質浄化技術は、湿原を含む生態系の富栄養化を経済的かつ省力的に抑制する手法として期待されています。これまで搾乳牛舎排水処理用に開発されてきた人工湿地浄化技術を、でん粉廃液のような超高濃度有機廃液が浄化できるシステムとして発展させれば、高濃度の工場廃液や糞尿なども含めて、その適用の可能性は飛躍的に広がると考えられます。

伏流式人工湿地(ヨシ濾床)によるパーラー排水浄化システムの概要
伏流式人工湿地(ヨシ濾床)によるパーラー排水浄化システムの概要
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パーラー排水浄化システムへの取り組み

北海道大学と農研機構北海道農業研究センターを中心とする産学官連携チームが平成17年度に別海町でパーラー排水浄化システム実証試験施設を建設し、研究を開始しています。平成18年度からは気象や地質条件の異なる道東(別海町)と道北(遠別町)の2つの酪農地域において実証試験を行っています。

縦型濾床では、レキや砂などによる濾過や吸着、酸化的分解などにより、牛乳や糞などの有機物や大腸菌などを取り除きます。また、アンモニアなどの窒素成分は、好気性微生物の働きで硝酸に変化(硝化)します。横型濾床では嫌気性微生物の働きにより硝酸を窒素ガスに変化(脱窒)させて空気中に放出します。冬期間に濾過や吸着により蓄積した窒素成分は、生物化学的な硝化と脱窒の組み合わせで夏場に効率的に除去されます。システムに蓄積して次第に放出されるリン酸は粗粒の炭酸カルシウムや貝殻などで吸着して削減できます。吸着したリン酸は肥料として農地に還元することが可能です。このように年間を通じて水質浄化が継続する仕組みになっています。

パーラー排水浄化システム実証試験施設、別海町
パーラー排水浄化システム実証試験施設(別海町)
4段の湿地で段階的に浄化される(左が原水、右が処理水)
4段の湿地で段階的に浄化される(左が原水、右が処理水)
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でん粉工場廃液浄化システムへの取り組み

清里町農協のでん粉工場からは毎年9月から11月までの3ヶ月間に、1日に600t程度のデカンタ排水と800t程度のセパレータ排水が排出され、現状では一部を液肥として畑地に散布し、残りを敷地内の沈殿池に貯留し地下浸透処理しています。しかし、でん粉廃液は有機物、窒素化合物、浮遊粒子状物質濃度等がきわめて高く、それらが発酵して生成した汚泥状物質が浸透池に堆積して地下浸透を阻害し、いくつもの浸透池に古い廃液が「越年水」として残っています。浸透池では廃液中の有機酸が揮発して悪臭が発生しています。

農研機構北海道農業研究センターを中心とする産学官連携チームが伏流式人工湿地(ヨシ濾床)システムを導入すべく平成18年より調査を開始し、平成20年に当社が中心となって試験施設の建設工事を開始し、8月には『清里町農協でん粉廃液処理実験施設』が完成、9月に稼動を開始しています。

でん粉工場からの排水はパーラー排水と比較すると有機物、窒素成分、SSなどが約10倍の濃度で含まれています。それらの除去のために濾床を通過した廃液を再度同じ濾床に戻して浄化率を高める循環システムおよび、過剰な有機物等の生物分解を促進して、濾床の目詰まりや濾過能力を回復させるために乾燥システムを採用しています。これらのシステムはパーラー排水浄化システム実証試験施設にもフィードバックされ、良好な結果が得られています。

清里町農協でん粉廃液処理実験施設
清里町農協でん粉廃液処理実験施設

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